インバウンド客の「リピート」を生む企業と生まない企業、何が違うのか
インバウンド対応に力を入れている企業・店舗・施設のなかで、「一度来てくれた外国人観光客がまた来てくれる」という好循環を作れているところと、「来てくれるが一度きり」で終わってしまうところに、はっきりと分かれる傾向があります。
この差はサービスの質だけで生まれるわけではありません。立地・価格・クオリティが同程度であっても、リピートを生む企業と生まない企業には、明確な違いがあります。
インバウンド客のリピートは、単なる「また来てくれた」以上の価値を持ちます。リピーターは口コミを広め、SNSで発信し、友人・家族・同僚に「次に日本に行くなら絶対ここに行くべき」と薦めます。一人のリピーターが、何人もの新規来客を連れてくる連鎖が生まれるのです。
本記事では、インバウンド客のリピートを生む企業と生まない企業の違いを、具体的な観点から解説します。
リピートが生まれる根本的な理由
そもそも、なぜ人は同じ場所にまた来るのでしょうか。
価格が安いから、という理由でリピートする人はいます。しかし価格だけのリピーターは、より安い選択肢が現れた瞬間に離れます。長期的なリピーターを生むのは、「また来たい」という感情的な動機です。
英語圏の旅行者の行動心理を見ていると、リピートを決める動機には共通したパターンがあります。
「自分のことを覚えていてくれた」という体験
人間は、自分が認識・記憶されていると感じたとき、強い親しみと信頼を覚えます。スタッフが前回の訪問を覚えていてくれた、好みを把握してくれていた——こういった体験は、価格やロケーション以上の「また来たい」という動機になります。
【実体験】ブラジル・サンパウロのバーにて
私自身、旅先で「自分の存在を覚えていてくれた」ことに深く感銘を受け、その国を訪れるたびに必ず足を運ぶようになった店があります。
仕事でブラジルのサンパウロを訪れたときのことです。 初年度にたまたまふらりと入った、雰囲気の良いバーがありました。その年は、店主と「どこから来たの?」「日本からだよ。でも、今はロサンゼルスに住んでいるんだ」といった、ありふれた世間話をしただけで店を後にしました。
驚いたのは、翌年再びその街を訪れ、そのバーに顔を出したときです。 席につくやいなや、店主が弾んだ声でこう話しかけてきてくれたのです。
「去年も来てくれたよね? まだロサンゼルスに住んでいるの?」
一年にたった一度、それもほんの数分交わしただけの些細な会話です。店主にとっては、日々やってくる無数の客のひとりだったはず。それにもかかわらず、自分のことを、そして会話の中身まで正確に覚えていてくれた――。
この瞬間に生まれた感動と「特別扱いされた」という喜びは、何物にも代えがたいものでした。こうした小さな体験こそが、「来年もまた、ここに帰ってこよう」と固く決意させる、リピートの真のトリガーになるのです。
「ここでしか得られないもの」という認識
どこでも手に入るものは、リピートの理由になりません。その場所・その人・その体験にしかない何かが、リピートを引き起こします。
「次への期待」が生まれたとき
「また来たら何が新しくなっているだろう」「次は別のメニューを試してみたい」という前向きな期待感が生まれたとき、リピートの種が植えられます。
リピートを生む企業の5つの特徴
特徴1|「来た後」のコミュニケーションを設計している
リピートを生む企業と生まない企業の最大の違いの一つが、「来た後」への投資です。
リピートを生まない企業は、来客が帰った時点でその関係が終わります。リピートを生む企業は、帰った後からが始まりだと考えています。
具体的には:
- サンキューメール・メッセージの送付:来訪後に英語でのお礼メッセージを送る。「先日はありがとうございました。また日本にいらした際はぜひ」という一言が、次の来日時の訪問先リストに入るきっかけになります
- SNSでのつながり:InstagramやFacebookでフォローし合うことで、日常的な接点が生まれます。来客が日本に来る前の情報収集段階で、タイムラインに自然に現れる存在になれます
- ニュースレター・メルマガ:英語でのニュースレターを定期的に送ることで、「あの場所は今どうしているか」という存在感を維持できます。新メニュー・季節の情報・イベント告知などは、再訪の動機になります
特徴2|スタッフが「個人」として記憶されている
チェーン店や施設型のビジネスでも、「あのスタッフに会いに行きたい」という動機でリピートが生まれることは珍しくありません。
特に英語圏の旅行者は、「人とのつながり」を旅の大切な要素として捉える傾向が強いです。流暢な英語が話せなくても、笑顔・誠実さ・一生懸命に伝えようとする姿勢が相手の心に残ります。
「あのお店の〇〇さんに、今度日本に行ったら会いに行きたい」——こういう感情が生まれたとき、リピートはほぼ確実になります。スタッフ個人が「顔の見える存在」として記憶される体験設計が、リピート率の高い施設には共通しています。
特徴3|「次回への布石」をさりげなく置いている
リピートを生む企業は、来客が帰る前に「次への期待」を植え付けることが上手です。
例えば:
- 「次に来たときには、春限定のメニューが出ています」
- 「来月から新しいエリアがオープンするんですよ」
- 「毎年この時期に来てくださるお客様が多くて、その頃は特別なイベントもあります」
こういった会話の中の一言が、相手の頭の中に「次」を想像させます。帰国後、日本旅行を計画するタイミングで「あそこにまた行きたい」という記憶が呼び起こされます。
特徴4|口コミを「設計」している
リピーターは口コミの発信者でもあります。リピートを生む企業は、来客が自然に口コミを発信したくなる仕掛けを意識的に作っています。
具体的には:
- 写真を撮りたくなる瞬間・場所の設計:インスタ映えという言葉は陳腐化しましたが、「誰かに見せたい体験・場所・モノ」を意識的に作ることは今でも有効です
- ユニークなストーリーを持つ商品・体験:「これ、どこで手に入れたの?」と聞かれるような独自性が、口コミの起点になります
- 英語での口コミ依頼:来訪後に「Google MapsやTripAdvisorにレビューを書いていただけると嬉しいです」と英語でお願いすることは、多くの英語圏旅行者にとって自然なリクエストです
特徴5|「日本にいる間だけの関係」で終わらせない
リピートを生まない企業の多くは、来客が日本を離れた瞬間に関係が切れます。リピートを生む企業は、帰国後も続く関係を作ります。
SNSのフォロー・メルマガの購読・LINEやWhatsAppでのつながり——これらは、物理的な距離を越えて関係を維持するためのツールです。
特に英語圏では、旅先で気に入った店・施設のSNSをフォローし、帰国後もコンテンツを楽しみながら「また行きたい」という気持ちを温め続けるという行動が一般的です。日常の中で定期的に接点を持ち続けることが、次の来日時の訪問先としての優先度を維持します。
リピートを生まない企業の3つのパターン
反対に、リピートが生まれにくい企業には共通したパターンがあります。
パターン1|「来てくれてありがとう」で終わる
来訪中は丁寧に対応するが、帰った後は何もしない。次への接点を作らないまま終わると、来客の記憶は時間とともに薄れます。次の来日時に「そういえばあそこに行ったな」と思い出してもらえるかどうかは、帰国後のコミュニケーション次第です。
パターン2|英語での発信が来訪前だけで終わる
英語のウェブサイト・SNSを整備して集客には成功しているが、来訪後の英語コミュニケーションが続かない。来客が帰国した後に英語で接触できる手段がなければ、関係は一度きりになりやすいです。
パターン3|「どこでも同じ体験」になっている
品質が安定していることは大切ですが、「どこに行っても同じ」という体験はリピートの動機になりません。その場所・その人・その時間にしかない「唯一性」が薄いと、わざわざまた来る理由が生まれにくくなります。
リピーター獲得のために今すぐできること
大きな投資をしなくても、今日から始められる取り組みがあります。
① 来訪後の英語サンキューメールのテンプレートを作る
来客にメールアドレスを聞ける環境であれば、帰国後に英語でお礼メッセージを送る仕組みを作ってください。内容はシンプルで構いません。「先日はご来店ありがとうございました。次回日本にいらした際もぜひお待ちしています」という一文があるだけで、印象が大きく変わります。
【さらに効果を高める】相手の母国語で伝える「ありがとう」の価値
もし余力があれば、英語だけでなく「お客様の母国語」に合わせたサンキューメッセージを用意しておくと、その感動はさらに深いものになります。英語・中国語・韓国語・フランス語・スペイン語、主要な言語だけでもできる範囲で複数のバリエーションを準備してみてください。自分の国の言葉で届いた「ありがとう」の一言は、海を越えて相手の心にしっかりと届き、あなたのお店に対する好感度を一気に飛躍させてくれるはずです。
② InstagramやFacebookでフォローし合う習慣を作る
来訪中に「よかったらSNSでつながりましょう」と声をかける文化を、スタッフ全体で作ってください。その場でフォローし合うことで、帰国後も自然な接点が続きます。
③ Google MapsとTripAdvisorの英語レビューに返信する
英語でのレビューが届いたら、必ず英語で返信してください。「また来てほしい」という気持ちを伝えることで、書いてくれた人の再訪意欲を高めるとともに、次の来客への信頼性向上にもなります。
④ 「次への期待」を伝える一言を習慣化する
来客が帰る際に「次回は〇〇の季節が特に素晴らしいですよ」「来年はこんな新しいことを予定しています」という一言を添える。これを全スタッフの習慣にするだけで、リピート率は変わります。
まとめ
インバウンド客のリピートを生む企業と生まない企業の違いは、「来ている間」の対応だけではありません。「来る前」「来ている間」「帰った後」という3つのフェーズすべてにわたる設計が、リピートを生む企業の共通点です。
リピートを生む5つの特徴をおさらいします。
- 「来た後」のコミュニケーションを設計している
- スタッフが「個人」として記憶されている
- 「次回への布石」をさりげなく置いている
- 口コミを「設計」している
- 「日本にいる間だけの関係」で終わらせない
一度来てくれた英語圏のお客様との関係を、帰国後も続けること。これがインバウンドビジネスを「一過性」から「継続的な資産」に変える最大の鍵です。
株式会社つむとについて
私たちつむとは、インバウンド向けの英語コンテンツ制作・SNS運用支援・マーケティング戦略立案を含む、北米市場向けの広告・マーケティング支援を専門とする会社です。「インバウンド対応を強化したい」「英語圏のリピーターを増やしたい」という企業のご相談を、初期段階からお受けしています。
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